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古民家の土壁。断熱の性能は? 断熱リフォームするなら基本は必ず知っておこう!

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土壁には断熱性能がありますから・・」ってよく聞きませんか?

「土壁には断熱効果・・・」とかいう話、ちらほら古民家再生見学会などではよく聞く話です。

 

特に蔵などの改修工事後、夏に見学したときなど、ひんやりした蔵内部で工務店のおじさんがしたり顔で「土壁には断熱性能があるからねー」とのたまわってくれます。が、それってほんとに断熱の性能が高いの? じゃあどうして、冬は蔵の中寒いの? という疑問が湧きませんか?

 

このひんやりは、主に土壁の断熱性能よりも、その熱容量に負うところが大きいです。土壁の熱しにくく、冷めにくいという特徴が夏の蔵ひんやりを実現しています。蔵の土壁は、ときには厚みが30cmもあります。この30cmの土壁は建物の外気温の影響を受けにくく、外気温が高かったり、日射があたっていても急激に温度が上がらりません。冬の場合は逆に冷めにくいので建物の中の熱が逃げにくくなっているのです(体感温度は気温、室温や湿度や輻射などのいろいろな影響が重なり合います)。

 

と、熱容量あれこれとお話をしましたが、もちろん、土壁にも断熱性能があります。

 

土壁の断熱性能がどれぐらいかお伝えする前に、熱伝導率についてお話します。断熱性能が高い=熱を通しにくいということで、断熱材は熱が移動しにくいものを素材にするのがいいとされています。熱の移動しやすさは、熱伝導率で表され、数字が低い方がたくさん熱が移動しにくい=性能が良いとされています。

 

ちなみに、熱伝導率とは厚さ1m*面積1m2の建材を挟んだ両側に1度の温度差があるとき、1秒間に熱量がどれくらい移動するかを表しています。熱伝導率の単位は「w/m・k」(ワット・パー・メートル・ケルビン)が用いられます。

それでは、おまたせしました土壁の断熱性能=熱伝導率は、、、、、

 

その数値は0.69w/mk!

 

なんだかよくわかりませんが、おおすげー!って思われるかもしれません!家づくりの考える中で、断熱のことを調べていてこの数字にぶち当たっても単位や読み方は覚えて置かなくてもいいです。

 

が、設計事務所さんや工務店さん、ハウスメーカーさんと断熱ばなしになったときは、ちょっとネット検索してどのぐらいの性能があるのか調べることぐらいはしたほうがいいことだけ覚えておいてください。

 

土壁の断熱材としての性能はグラスウールの1/20以下

土壁の熱伝導率が0.69w/mkだということがわかりました。では、その数値がどれぐらいのものなのか、他のものと比較してみましょう。比較するのは、断熱材で一番の知名度をほこるグラスウール!

 

グラスウールの断熱性能はといいますと、

グラスウール10K相当で0.050w/mk、

高性能グラスウール24K相当で0.036w/mk

になります。

 

?????って感じですよね。

 

土壁の熱伝導率が0.69w/mkなので、小数点以下、ヒト桁ずれています。土壁はグラスウールの1/14〜20程倍、熱を伝えやすい建材です。もちろん、土壁にも冒頭で述べたように断熱性能はあるのですが、断熱材として期待していると痛い目というか、冬には寒い目に合います!

 

下記の数字、 覚えておく必要ありませんが 念のため。復習。

素材名熱伝導率
土壁0.69w/mk
高性能グラスウール24K相当 0.036w/mk
グラスウール10K相当 0.050w/mk

 

土壁がだめなのでなく、古民家を数値で考えてみることも大事

このブログは土壁があかんといいたいわけではありません。

 

ですが、「土壁には(高い)断熱性能がありますから」という営業トークで、寒い目に会わないようにしてくださいということお伝えしたいのです。

 

この「土壁断熱性能ある」という営業トークは言葉としては間違っていないのかもしれません。だって、断熱性能はたしかにあります。しかし、お施主さんが求めているのは「寒くない」ことです。

 

古民家に住んでいたり、購入して工務店さんと古民家再生の相談をしている住まい手さんの求めていることから、「「土壁には(高い)断熱性能がありますから」という営業トークは適切な答えになっていないと思います。

 

建築業界で働いていない一般の方は、当然数値のことなど知らないですから、「断熱性能」という言葉だけが独り歩きしています。ぜひ、断熱リフォームを検討されているのであれば数値でご検討ください。

 

断熱リフォームは、土壁だけでなく、窓、床、天井などいろいろやるところが多いですが、それぞれの性能をあげていくことしかゴールには達しません。

 

しかし、それぞれの部位を何かしら断熱補強してやることで部屋全体の悪かった数値が、少し改善されます。例えばここで話題としている土壁の断熱リフォームをすれば、壁の部分の断熱性能があがるのでその家(もしくは部屋)の断熱の性能があがります。

 

新築みたいな高気密・高断熱でなくてもどうやって暖かく暮らすか

一度に家全体(または部屋全体の)断熱性能をあげなくても、部分でやっていく方法もあります。例えば、下の写真のようにペアガラスのインナーサッシをとりつけたりするのもその一つの方法です。

 

 

古民家でも新築工事の高断熱・高気密の理屈があてはまります

この図は、「新木造住宅技術研究協議会(略称:新住協)」が会員向けの資料から抜粋しました(輝建設も新住協会員です)。新住協では、この図のように断熱材と途切れなく施工するにはどのようにしたらいいのか、隙間はどのように処理すればいいのかなど、会を主催される鎌田先生を中心に全国の工務手さんが切磋琢磨されています。

 

新住協 鎌田先生
鎌田紀彦先生は室蘭工業大学元教授。高断熱・高気密施工方法を確立されました

断熱よりも気密が大事!!??

当社では新住協で勉強した断熱・気密の知識や技術に基づいて、新築工事や古民家の断熱リフォームをご提案しています。住宅の断熱に関しては、昨今、多くの方が関心を持たれています。しかし、古民家に関しては断熱よりもある意味、気密が大事と言えるかもしれません。

 

上の写真は土壁と柱の隙間に発泡ウレタンを入れています。土を塗ってから乾燥することで土と柱の間にどうしても隙間が生まれがちです。昔は柱なども人工乾燥させずに出材していたでしょうから、家というかたちになってもまだ乾燥して柱側からも隙間が増える要因になっています。

 

ちなみに「ノレン(布連)」といわれる布を柱に打ち付けて土をつけていって隙間がでないようにする方法があります。手間賃が増えるのですべての土壁で採用されているわけではありません。

 

 

お客さんの方も科学的な根拠に基づいた暮らし方改善について、なかなか聞く耳を持っていただけないことが結構あります。昔ながらのものについてあれこれ研究している人たちがたくさんいて、 こうつかえばいいんじゃないとか ここはこういうもので 補えばいいですよとか いうせっかくの知見は、実はどんどんでてきています。

 

なんとなくのイメージで 見逃してしまうと もったいないですよ! ということが言いたいのです! ということで、 古民家好きでも 新しい技術についても 目を向けましょう!

 

気密工事のほうが断熱工事より安価です

先日、古い建物の改修の相談で来られた方がいらっしゃいました。 建物が隙間だらけだし、断熱もはいっていないからとても寒いんですというお話。

 

そこで、隙間をなくす、すなわち気密を高める工事をしないといくら温めても暖かい空気逃げちゃいますよーという話をしました。 が、高気密になると息苦しい感じがするからあまり気密を高めたくないというお返事。

 

古民家で実際、高気密と言われるまで気密をアップするのは至難の技ですから とかいえば施工会社としてどうなんですかといわれそうですが、 そこまで気密あげたくてもあがらないからできるだけ隙間埋める工事は暖かい家を作るためには必須ですと お話ししました。

 

が、高気密=息苦しいというイメージをし払拭できないのでなかなか伝わりませんでした。

 

床暖房や薪ストーブをいれたらと暖かくなるイメージをお持ちのようだったので、機器に頼る前に断熱と気密の工事をしないと、、、 とお伝えしたかったのですが。

 

しかし、家に必要なものは、人によって違います。その違いは、経験からなのか、知識からなのか、文化からくるのか。いずれにせよ、あなたの家を気持ちのいい場所にするためには、あなた次第なのです。

 

なので、こういう場合、私の意見が正しいといった意見は必要ないと思います。あくまでもニュートラルな中立的な立場で情報をお伝えするのが工務店や設計事務所さんなどがいれば、いろいろと家づくりをアプローチを考える事ができると思います。そのような家づくりパートナーさんが見つかるのが、気持ちのいい場所づくりに一歩近づく近道かしれません。

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