そとん壁の魅力と施工のコツ|初心者でもわかるガイド
そとん壁は、自然素材の美しさと独特の風合いが魅力で、断熱性・調湿性に優れ、健康的で快適な住環境を提供するため、環境に優しく長期的なコストパフォーマンスが高いことから、伝統的な建築文化を継承しつつ現代のデザインに調和する人気の建材です。多くの工務店さんから支持されている左官材です。当社でも20年以上使っていますので、経年変化、不具合、メンテナンスについてもお伝えできることもたくさんあるかと思い、ブログ記事を作成しました。
目次
1. そとん壁とは
そとん壁は、100%自然素材である火山噴出物シラスを使用して作られた壁材です。シラスは、鹿児島県の姶良カルデラの大噴火によって堆積した火山灰で、高温のマグマにより焼成された高純度の無機質セラミック物質です。シラスは化学物質を含まず、人体に有害な影響を与えることがないため安心して使用できます。そとん壁は自然素材を使用しているため環境にも優しい建材です。
近年、自然素材の特性と独特の質感が特徴で、近年人気の左官材料です
2. そとん壁のメリットと後悔しないためのポイント
そとん壁には以下のようなメリットがあります:
- 自然素材の美しさ:時間が経つほどに風合いが増します。
- 断熱性と調湿性に優れる:シラスの多孔質構造により、外壁仕上げとしては、比較的、外気の温度を遮断し、夏は涼しく、冬は暖かく保つための貢献します。また、シラス壁は湿気を吸収・放出する特性があり、壁自身のカビや結露の発生を防ぎます。
- 耐久性:そとん壁は、紫外線や風雨による劣化が少なく、無機物のため有機質の塗料と違い栄養源がなくカビが基本的に発生しない※、また色の退色も起こりにくいといった高い耐久性とメンテナンス性を持っています(埃などの外的要因でカビが生える可能性もあります)。適切なメンテナンスを行うことで長持ちします。
そとん壁を選ぶ際には、以下のポイントに注意することで後悔を防ぐことができます:
- 適切な施工業者の選定:経験豊富な業者に依頼することで、施工の品質が確保されます。もしもあなたが家づくりを依頼する予定の工務店さんとその協力後湯者の左官業者さんが不慣れな場合は注意してください。左官業者さんが不慣れな場合は特に気をつけてどのようにトラブルにならないように施工するのかを事前に確認しておいた方がいいです。
- メンテナンスの理解:比較的メンテナンスを必要としない材料ですが、全く必要でないというわけではありません。適切な時期にその手間=費用が発生するということを理解しておくことが重要です。
- 初期費用の把握:そとん壁の初期費用は高めですが、長期的な視点でのコストパフォーマンスを考慮できれば採用を前向きに検討してもいいと思います。
3. そとん壁の価格
そとん壁の施工費用は他の建材と比較してもコストパフォーマンスが高いと考えられます。初期費用は高めですが、長期間にわたる耐久性や低メンテナンスコストを考慮すると、トータルコストで優れています。
新築やリノベなどでのそとん壁の見積(初期費用)には、材料費と施工費が含まれます。自然素材を使用するため、他の建材に比べてやや高めのコストとなることが一般的です。しかし、その後のメンテナンス費用が低く抑えられるため、長期的な視点で見るとコストパフォーマンスが高いと言えます。
また、そとん壁は断熱性や調湿性に期待できるため、住環境が快適性や長寿命化に寄与するだけでなく、エネルギーコストの削減にも多少は貢献します。
4. そとん壁の色おすすめ
そとん壁の色選びは、建物の雰囲気を大きく左右します。自然素材の特性を生かした色合いが人気です。おすすめの色には、ベージュやブラウン、グレーなどがあり、これらの色はどんな建物にも馴染みやすく、自然な風合いを引き立てます。
特に、ベージュやブラウンは暖かみのある色合いで、木造建築との相性が抜群です。グレーはモダンな建築に合わせやすく、スタイリッシュな印象を与えます。選ぶ色によって、建物の印象が大きく変わるため、慎重に選ぶことが重要です。
そとん壁の色は、上塗りに使用される天然岩石の粉砕物によって生成されます。このため、色あせにくいという特徴がありますが、濃い色や鮮やかな色がありません。自然の顔料であるため、色合いは落ち着いたナチュラルなものが中心です。
5. そとん壁の価格:30坪の場合
30坪の建物にそとん壁を施工する場合の価格は、一般的には概算で以下のようになります:
- 材料費:約300万円
- 施工費:約200万円
- 合計:約500万円
この価格は、使用する材料や施工の難易度、地域によっても変動するため、施工前には具体的な見積もりを工務店に取ることが重要です。初期費用は高めですが、長期的な視点でのコストパフォーマンスを考慮することが大切です。
6. そとん壁と他の外壁材の価格比較
そとん壁は、他の外壁材と比較して初期費用は高めですが、長期的な視点で見るとコストパフォーマンスが高いです。以下は、一般的な外壁材との価格比較です:
- そとん壁:初期費用が高め、長期間にわたる耐久性、低メンテナンスコスト
- サイディング:初期費用が中程度、耐久性は中程度、メンテナンスコストはやや高め
- サイディング+塗装壁:初期費用が低めあるいは中程度、耐久性は低め、メンテナンスコストは高め
そとん壁は、初期費用が高いものの、長期間にわたって美しい状態を保つことができ、長期の視点に立てばトータルコストで優れています。一方、サイディングや塗装壁は初期費用が比較的安価であるため、予算に応じて選択することができます。
7. そとん壁の施工方法
そとん壁の施工にはいくつかのステップがあります:
1.下地処理:
外壁の通気をとって木ずりを貼って、防水シートにラスを貼ります(写真は防水シートを貼る前の木ずりの状態。木ずりの下が通気層になっています)。
2.下塗り(10mm):
専用の下塗り材が波型ラス網によくからまるように、しっかり抑え塗りしながら、10mm厚以上塗りつけし、平らに均します。最後にほうき引きをして、表面を荒らしてください。※上塗りまでの養生期間は、1週間以上としてください。
3.上塗り(8mm):
専用の下塗り材の上に、専用の上塗り材を8mm厚以上に塗り付け、平らに均します。塗り付け後に左官刷毛を引き、出隅・入隅の形を整えてください。
4.仕上げ:
仕上げ用のかき落とし器やスチロゴテ等でテクスチャーをつけて仕上げます。下記のような仕上げのパターンがあります。
施工になれていないと、下地処理がうまくいっていないなどのトラブルが発生します。例えば下地処理がうまくできてなくて、壁面が汚れていたり、凹凸がある場合は、そとん壁材が均一に塗れず、仕上がりが悪くなります。下地をしっかりと整えることで、次の工程がスムーズに進みます。
また下塗り、上塗りもそとん壁材は、手作業で塗り付けることが一般的で、職人の技術が求められます。均一に塗り広げることで、美しい仕上がりを実現します。また、表面に模様を付けることで、独特の風合いを出すことも可能です。
8. そとん壁のスチロゴテ仕上げ
スチロゴテ仕上げは、そとん壁の仕上げ方法の一つで、滑らかで美しい表面を作り出します。この仕上げ方法は、そとん壁の特性を最大限に引き出すことができ、非常に人気があります。
スチロゴテ仕上げでは、スチロール製のコテを使用して、そとん壁材を均一に塗り広げます。この方法により、表面が滑らかで光沢のある仕上がりとなり、美しい外観が実現します。また、スチロゴテ仕上げは、耐久性にも優れており、長期間にわたって美しい状態を保つことができます。
9. そとん壁のメンテナンス方法
長く美しい状態を保つためには、定期的なメンテナンスが必要です。以下のポイントに注意しましょう:
- 定期的な洗浄:表面の汚れを取り除きます。
- ひび割れの補修:早めに補修することで大きなダメージを防ぎます。
そとん壁の表面は、定期的に洗浄することで汚れを防ぎ、美しい状態を保つことができます。特に、風雨やほこりによる汚れは、早めに取り除くことが重要です。柔らかいブラシやスポンジを使用して、優しく洗浄することが推奨されます。
また、そとん壁にひび割れが発生した場合は、早めに補修することが大切です。ひび割れを放置すると、水が浸入して内部構造にダメージを与える可能性があります。適切な補修材料を使用して、早期に対応することで、そとん壁の耐久性を維持することができます。
雨垂れで汚れがつきやすい
そとん壁は自然素材であるため、雨だれによる汚れが発生することがあります。これを防ぐためには、以下の対策が有効です:
- 適切な屋根の設計:雨水が直接壁に当たらないようにする。
- 雨垂れの跳ね返り対策 雨垂れが水切で跳ね帰って、埃を含んだ雨がそとん壁が吸い込む場合があります。跳ね返りしにくい形状や水の切れ方を考える必要があります。
- 定期的な清掃:早期に汚れを取り除くことで、美しい状態を保ちます。
10. そとん壁の20年後
そとん壁は、適切なメンテナンスを行うことで、20年後もその美しさと機能を保つことができます。経年変化を楽しむことができるのもそとん壁の魅力の一つです。
20年後のそとん壁は、自然素材ならではの風合いがさらに深まり、独特の味わいが出てきます。定期的なメンテナンスを怠らなければ、その耐久性は非常に高く、長く住み続けることが可能です。
11.施工例と新築以外にもそとん壁の施工用途
実際の施工例を紹介することで、そとん壁の魅力をより具体的に感じていただけます。
住宅の新築:
自然素材のそとん壁を使用し、エコロジカルな住環境を実現した事例
i-works1.0 in 東大阪 (2015年)
設計は建築家の伊礼智さん。伊礼さんは実はそとん壁の開発にも関わっていらっしゃいます。伊礼さんが開発された特別職が外ん壁にはあります。
新築の外壁以外にも、下記のような場合でも使えるかと思います。
古民家や築古住宅のリノベーション:
漆喰仕上げやモルタル掻き落としなどで仕上げられている外壁を自然素材のそとん壁で仕上げることで雰囲気をあわせるだけでなく、メンテナンス期間の長い素材で仕上げることで維持費用の管理も抑える。
店舗の外装:
独特の風合いを生かし、店舗の個性を引き立てた事例。
おまけ) そとん壁の伊礼色とは?
そとん壁の伊礼色は、建築家の伊礼智氏が提案された独自の色合いで、自然素材の特性を最大限に生かしたものです。上記の施工例の 「i-works 1.0」も伊礼色の外ん壁です。
伊礼色の番号は W-129 です。
もともとは伊礼さんが独自にオーダーされていたものが、伊礼さんの建物をみた人たち、工務店や設計事務所から一般販売の要望があってレギュラー販売されたという変わった出自の色です。
伊礼色には、ベージュ、ブラウン、グレーなどの自然に馴染む色が含まれており、どんな建物にも合わせやすいのが特徴です。伊礼色を採用することで、そとん壁の美しさをより引き立てることができます。
まとめ
そとん壁は、自然素材ならではの美しさと機能性を兼ね備えた優れた建材です。適切な施工とメンテナンスを行うことで、その魅力を長く楽しむことができます。また、初期費用は高めですが、長期間にわたる耐久性や低メンテナンスコストを考慮すると、コストパフォーマンスが高いです。
色選びや施工方法、メンテナンスのポイントを押さえることで、そとん壁の魅力を最大限に引き出すことができます。また、伊礼色などのおすすめの色合いを取り入れることで、建物全体の調和を図ることが可能です。
そとん壁を検討する際には、経験豊富な施工業者に依頼し、定期的なメンテナンスを怠らないようにすることが重要です。これにより、長く美しい外観を保ちつつ、快適な住環境を実現することができます。