古民家再生、見積調整。土壁の中途半端な解体はNG
古民家再生を工務店に依頼。現場を見てもらった後、間取りなどについて打ち合わせや、大工さんや解体業者さんと工務店と現場打ち合わせなどを経て、見積もりを作ってもらいます。
だいたい、解体は一式、となっていることが多いです。
もちろん、解体範囲は定まっているが、じっさいにどこまで壊すのかは、壁や天井、床などの仕上げの向こう側の傷み具合によるところが多いからです。
できるだけ解体を減らしたい = 手直し部分も減る= 減額
前述のように、古民家の解体において解体の範囲をどこまでとするのか設定するのが非常に難しいです。特に土壁の解体の判断が本当にいろいろな意味で判断が難しいです。
- 土壁内部の竹小舞の柱、梁への定着度合いが非破壊では判断できない
- 土壁自身内部の剥離(表面のシックイ、砂漆喰、中塗り、荒壁などのレイヤー間の剥離)
- 土壁自身の接着力の低下(竹小舞、貫などへの)
解体工事を減らせば、見積金額はダブルで減額。
解体工事が減れば、その部分の復旧工事もなくなるので見積金額を減じやすいです。
これまでの工事経験に基づいて、工事前の事前調査、解体工事中の最終判断にて解体範囲をできるだけ減らし、解体工事費の削減、その部分は全く新たにやり直しとせず、部分修復とすることで工事費が削減させて、見積金額を抑制したくなります。
で、この抑制した見積もりで工事に着工します。最初は解体工事になります。解体業者に施工範囲を指示して解体工事が始まります。
こうして、大体2週間〜3週間程度で古民家再生工事において、内部の仕上げを中心とした解体工事を終えました。事前に決めた解体範囲で見積金額通りの工事です。
大工工事がはじまったとき、大工目線は、既存柱や梁の構造としての再利用の可否は、ちょっとでも工事費を安くしてあげたいという目線とはちがいます。
建物の常時の振動や、土壁の自重により剥落の可能性を可能な限り低減できたとしても、地震に対する構造の検討要件として最低限の強度には仕上がらないと判断することが多い。ということで、壊してやり直したほうがいいと判断になる。
もちろん、期待したような減額にならないが、最初から壊して部分的に新設するような形での復旧とわかっていれば最初から見積もりに数字を入れておける。
仮に残して、修復とした場合も左官工事の工数が非常に増えてしまいがちです。また、それに伴って大工工事または竹小舞の下地工事などが、業種が多岐に渡ってしまいます。また傷みの程度が各箇所にて違うので、職方の手配が複雑に入り乱れ、工数が読みにくくなり、追加工事が発生しがちで工程が伸びがちとなってしまします。。
というわけで、土壁の解体は内外問わず、特に構造として重要な箇所として判断する場合は、一定のダメージ以上のものは中途半端な解体せずに柱、梁などで区切られた一角(面)ごとに解体の判断をして事前計画することが望ましいです。
構造として考えて、どのような下地とするのか
古民家再生工事の、対地震のことを考えたとき、伝統的な構造を生かせる、限界耐力計算という方法で構造補強の検討をします。しかし、その計算に係る作業は膨大となるので、設計費用もそれなりになります。
ということで、予算を削減しつつ、一定の耐震の性能をもたせることを検討する場合、現代の木造住宅工事で採用されている汎用的な構造補強で行えば、設計に関わる工数は短縮され、また大工も昔ながらの方法での仕口などに精通してなくても可能な方法が多い。また、大工の作業日数も減じられる。特に設計に関してはその工数減は大きい。
将来の職人不足に備えて、伝統的でないとしても汎用的な方法で延命措置的な工事や、予防医療的な工事を町場の工務店でできるようにしておくこともひとつ検討しておきたいことではないかと思います。
もちろん、現代の木造住宅工事で採用されている汎用的な構造補強を用いたとしても、内外観については伝統的意匠をまとわせることは必須である。
できるだけオリジナルの状態で保存しておきたいが、文化財としての側面を極端に重視せずに、どのように長くつかって快適に家族で過ごせるのかという視点も持ち合わせてバランスよく検討できればと思います。
故に、メリット・デメリットは全てにおいてあるので、各論のメリット、デメリットを教えてもらいつつ、総論でこの方法がいいのではと提案してくれる工務店さんで、相性合いそうなところで今後の検討してもらえればいいかと思います。
参考)土壁を乾式で復旧するときの下地類
- 例:土壁パネル+土壁
- 木ズリ+土壁
- 構造用合板+ラスボード(ラスカット)+土壁など