昭和9年の家から生け取った古材をつかって新築
昭和9年の家の古材を生け獲った、本物のアンティークの家
輝建設の小原です。
移築や、古い梁の再利用などいろいろな古民家の材料を生かした新築がありますが、今回はちょっと変わった家の建て方をご紹介したいと思います。
この写真の家は、アンティークな感じですが、奈良市に2016年に当社が建てた新築です。古民家を事務所にしていることで古民家に関するご相談をよくお受けします。現地での再生以外ですと、移築や古材を部分的につかった新築の話などがこれまでにありました。
今回のお客さまも元々は、戦前の有名な建築家が設計した家の移築のご相談からスタートしました。しかし、その計画は、その家は現地で再生工事をするという買い手が現れて流れてしました。
ところが、流れてしまった移築話の家の関係者から、同じ設計者の建物で解体されるものがあるという情報をくださりました。前回の計画で、新築工事のなかで移築にかかる費用の割合が思ったより高いこと、これまでに当社で手がかけた移築などの経験から傷んだところの取り換えなどで、構造材の生かし取っても再利用するための歩留りが悪いことを説明していたので、構造材は再利用しない方針となった。
古材を生かし撮りする前にしたこと
宅内をあれこれ採寸しました。再利用するにあたってできるだけ同じように取り付けするための資料としています。
階段は上下への導線なので採寸は結構大変です。
手すりだけでない、どこまで生け捕れるのかというのはこの段階ではまだわからないところがありますので、解体のときに破損すれば復旧しなけれならない資料が必要です。
実測後に、大工さんと何日かにわたって、内装材を生かし取りしていきました。通常の解体とは勝手が違うのでなかなか手が進みませんでした。内部だけでなく、外部の窓、玄関も。天井板、床板、階段なども。
網代天井。薄板を編んだ天井に使われるものです。こちらのものは杉板を編んだものでした。薄いので、作業中も割ってしまわないか乳ドキドキです。
床板を一枚ずつはぐというのは、結構、手間暇がかかるものなんです。
防犯の観点から外部窓の撤去は最後の最後に。2階は床板がほぼなくなったので最後は足場板を置いての作業でした。
生かし採った階段などの材料をいったん、倉庫に。
棚板(@新築現場)
階段手すり。
新しい構造材は、高知県梼原町の杉、ヒノキ。
あとあと、露出になる材料は黒く塗装をして古材のような雰囲気に仕上げておきます。
軒裏の30mmの杉板も。
古材を使った新築ですが、断熱気密についても施工しています。準防火地区ということで延焼ライン内は木製建具のみはNGなので防火戸をいれています。
BEFORE→AFTER
京都時代の階段室。
奈良に新築してからの階段室。踊り場のガラス障子の向こう側に防火戸がしこまれています(2枚前の写真にもどって確認してみてください)。
京都時代
建具の再利用は今までにいろいろやってきましたが、栂の床板前面に再利用というは初めてでした。この床板再利用がなんとも言えない懐かしさのある新築になっていると思います。
和室の工事中。建具や床柱などを再利用。
外して、またつけて。大工さんがよくやってくれました。
天袋の引き手もオリジナルのものです。
他ではあまりみかけない、独特の引き手のデザイン。
玄関、BEFOEE。外壁の腰板はリブありのブリキ板に変えられていた。
After。腰板は焼杉に。玄関ポーチのタイルはお施主さんのDIY。オリジナルの木製建具で準防火地域に対応するために眼だ立たないように防火シャッターを取り付けています。
玄関のBEOFRE。
玄関AFTER。この後にお施主さんが土間にタイルをレンガ調のタイルを貼られました。天井の網代も再利用です。
移築、構造材の再利用などいろいろありますが、今回のように内装材を全面的に再利用するというのは初めてのことでしたが、とても雰囲気のあるいい家になりました。