田舎の古民家再生における給湯システムの選び方|プロパン?エコキュート?灯油ボイラー?
目次
古民家再生における給湯・煮炊きの熱源選びの課題
先日、大阪南部で来年度の古民家再生の打ち合わせでした。話題は下記の通り。
「古民家再生工事のあと、給湯と煮炊きの熱源をどうするか……。」
ちなみに地域一帯、今後都市ガスが整備されることはないということでした。
プロパンガスと灯油給湯器の現状|それぞれのメリットとデメリット
こちらのお客さま宅、現状、煮炊きにはプロパンガス、給湯には灯油を熱源としています。ご希望は「煮炊きはそのままプロパンで、給湯はエコキュートに変更したい」というものです。
都市ガスの地域に住んでいる方は、「えっ、煮炊きにプロパンガスを使うなら、給湯もプロパンガスでいいじゃん!」と思われるかもしれませんが、プロパンガスは……お値段がとても高いのです!
私も以前、東大阪市の端っこでSOHOに憧れて工場跡に住んだとき、給湯と煮炊きがプロパンガスでした。その前に住んでいた都市ガスの家の月々のガス代と比べると、プロパンガスの価格はだいたい3倍くらいしていました。そこには短期間しか住まなかったのですが、のちのち調べてみると、プロパンガスの価格比較サイトがあって、お店によっては半額になることもあるとか……。
「お店?」と思われた方もいらっしゃると思います。
実は、プロパンガスは販売店によって価格が異なります。都市ガスユーザーからすると「それって本当!?」という話ですよね。意外と、プロパンガスユーザーも昔からの付き合いのある燃料店や、村にある燃料店から購入しているため、単価の見直しがされていないことが多いのです。どういう業界のカラクリかはわかりませんが、概して都市ガスより高いと言えます。今回のお打ち合わせしたお宅では、現在、給湯に関して灯油ボイラーを使用していました。打ち合わせ後、近隣を散歩してみると、電気温水器やエコキュート、灯油給湯器などを使っているお家が多く、「やっぱりプロパンは高いよね〜」という雰囲気がありました。
プロパンガスについて否定的な話ばかりしていますが、地震などでライフラインが寸断されたときでもプロパンガスなら火を使うことができます(屋台の調理などもプロパンガスです)。
プロパンガスは、同じ立米数なら都市ガスの2倍の熱量があります。そのため、「都市ガスと同じ熱量なら半分の量で済むから、金額は変わらない」とプロパンガス業者のサイトで説明されていることもあります。ただし、人件費や配送コスト、自由料金制などの要因で、実際の単価は都市ガスより高くなりがちです。
エコキュートの導入がもたらすメリットとコスト回収までの計算方法
上記のようにプロパンガスにも利点はありますが、お施主さんは今回の古民家再生工事でランニングコストを考慮し、プロパンガスの採用を見送りました。
そこで、代替案を見ていきましょう!
- 灯油ボイラー
現在使用している今後、給油がネックになっています。昔は近所のガソリンスタンドの兄ちゃんが電話ひとつで「はいよー」と給油に来てくれましたが、今はそうもいきません。年を重ねると、自分でタンクに注油するのは負担でねーとおっしゃっていました。
- 電気湯沸かし器
電気を抵抗体に通して、出た熱で生焚きでお湯をつくるあれです。初期費用が安いですが電気代が高くなります。
- エコキュート
は初期費用が高いものの、電気代が安いです。大気の熱をヒートポンプで圧縮して少ない電力でお湯を作ります。数年で電気湯沸かし器よりも高くなったコストを回収できます。
ということで、今回はお湯はエコキュートにすることになりそうです。煮炊きについては、これまで通り火を使いたいということでプロパンを継続することになっています。
床暖房の導入を検討する理由|他の暖房システムとの比較
さらに、床暖房も導入したいとのご希望があり、エコキュートなら温水式床暖房も利用可能ということで導入の打ち合わせもついでに。
最近、床暖房を希望されるお客さまが増えています。テレビは見ないのですが、TVCMが大量に出稿されているのでしょうか?実際、床暖房を希望される方との打ち合わせでは、他の暖房器具では満足できないことが多いという印象です。
- 費用面ではエアコン暖房のランニングコストが安いですが、温風吹き出しがイマイチ。
- オイルヒーターは電気代が高いです。
- 灯油は空気質の問題や火災のリスクもあります。
- 薪ストーブは憧れですが手間がかかります。
- ペレットも興味を引くものの、薪ストーブほどの魅力は感じないようです。
やはり、頭寒足熱の床暖房が気持ちいいと感じるのだと思います。確かに、足元が暖かいと快適ですね!足は着こんでもせいぜい、厚手の靴下とスリッパぐらいですし、暖気は天井付近に集まりま明日から、暖房の恩恵も受けにくいですし。
暖房効率を高めるための断熱・気密対策|古民家再生での施工ポイント
私の実家にも床下にコイルを回した床暖房があります(集合プロパンなのでガス代がとても高いですが!)どの暖房器具でも、ある程度の断熱や気密性能がないと効果を十分に発揮できません。私のほかのブログでご紹介しているように、隙間を埋めた古民家再生工事をしっかり行い、お客さまの床暖房が効くように施工しないとその効果が正しく感じられません。
まとめ|給湯と煮炊きの熱源はプロパンとエコキュートで決定!
今回の古民家再生プロジェクトでは、煮炊きの熱源には引き続きプロパンガスを、給湯にはエコキュートを導入することに決定しました。
プロパンガスは都市ガスに比べてランニングコストが高めですが、「火を使いたい」というご希望に応えるため、あえてプロパンを残す形にしました。特に古民家では、伝統的な「火」を使った調理が似合いますので、この点はお客さまのご要望を重視しました。
一方、給湯にはエコキュートを導入し、灯油や電気湯沸かし器より効率よくお湯を確保し、長期的に電気代も節約できます。初期費用は少し高めですが、数年でランニングコストの差額を回収できる見込みもあるため、エコキュートを採用することには大きなメリットがあります。また、エコキュートは温水式床暖房とも相性が良く、床暖房を検討している方にはおすすめの選択肢です。
古民家でも断熱や気密性能をしっかり整えることで、現代的な快適さと伝統的な風合いを両立できます。今回の再生工事でも、隙間や気密対策をしっかり施し、エコキュートや床暖房の効果が十分に発揮できるように工事を進める予定です。
熱源や暖房システムの選定では、単にコスト削減だけを考えるのではなく、住む人のライフスタイルや建物の特徴に合わせて最適なバランスを見つけることが大切ですね。